平成を旅行トレンドで振り返り

インターネット・スマートフォンの普及とSNSで様変わり

2019年2月13日 企業情報
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 2019年4月末の天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴い改元されることを踏まえ、平成時代30年間の旅行トレンドを振り返ります。この30年間はインターネットの普及に端を発するIT技術の革新により、旅行業界にもイノベーションが起きた時代となりました。この時代を大きく3つに分け、H.I.S.の歩みと共に振り返ります。

1989年~2000年 海外旅行転換期



旅の主流はパッケージツアー
 バブル景気から崩壊へと国内の経済が急激に変動し、海外ではベルリンの壁開放、ソヴィエト連邦解体という世界的にも大きな転換期を迎えたこの時期、海外旅行の主流はパッケージツアーと呼ばれる、旅行会社が企画・募集・催行するものでしたが、FIT(Foreign Indepedent Tour)と呼ばれる個人で海外に行く手配を取り扱う旅行会社が徐々に増加してきた時代でもあります。
 1980年創業のH.I.S.は、大手旅行会社とは異なり、海外格安航空券の販売から開始しておりましたが、1989年より自由度の高いパッケージツアー「Ciao(チャオ)」を主催・販売開始いたしました。当時のパッケージツアーでは珍しく、1名様から催行し、延泊や滞在行程のアレンジを可能とした新たなスタイルとして市場に打ち出し、現在でも主力商品として販売しております。また、H.I.S.の旗艦商品であった海外格安航空券は他旅行会社も取り扱いがされており、今では一般化されております。

情報はTVや雑誌などマス媒体から
 当時は、海外の物価事情を取り扱ったクイズ番組やヒッチハイクの旅が社会現象にもなったバラエティ番組など、各国の物価や異文化など海外の情報を収集する手段は、テレビを中心としたマス媒体が主流でした。現地に実際に行かないと得ることが出来ない情報も多く、海外旅行はまさに未知との遭遇という時代でした。旅行の航空券・ツアーを比較・検索する情報源としては月刊誌「エイビーロード」(1984年創刊、2006年9月号で休刊し現在はウェブでの展開)に代表される旅行商品比較情報誌が書店を通じて流通し、海外旅行を身近にした一役を担っておりました。その後、1998年前後よりインターネット、携帯電話が世帯・個人に徐々に普及し始め、これらが海外の情報を知る一つのツールとして活用されるようになりました。

拡大する中国への渡航
 海外渡航先ランキングでは、中国の急増がみられます。1990年は約46万人だった日本からの渡航者数は、翌1991年には約64万人にまで急成長しました。当時、中国は、鄧小平氏による経済の改革開放が行われており、経済が急成長し「世界の工場」と呼ばれるまでになり、生産の拠点を中国にも置く日本企業が増えてきた時期でした。この渡航者の拡大はレジャーよりビジネスでの渡航が増加してきた背景があり、2000年以降も引き続き中国の成長がみられます。
 また、USドルの為替レートの変動が大きく乱高下した時代(1990年1USドル=約144.8円、1995年1USドル=約94.06円、1998年1USドル=約130.9円 / 数値出典:国際通貨基金データ)ではありましたが、海外渡航者数には大きな影響はなく横ばい~微増傾向にあり、海外出国への意欲はアーリーアダプター層が担っている時代だったと考えられます。

 

2001年~2008年 9.11後の世界情勢混迷期

燃油サーチャージの設定
 大きな転機となったのは2001年に起こったアメリカ同時多発テロを発端とする、世界各地で起きた情勢不安です。伝染病の流行などもあり、海外へ出掛けることに対しネガティブな印象が色濃くでた時期でした。9.11のテロ以降、原油価格の変動が大きくなり、2005年、航空会社が急激な変動にも対応できでるよう、海外航空券の運賃とは別に変動制の「燃油サーチャージ」が設定されたのもこの時期となります。パッケージツアーでも燃油サーチャージは徴収となりましたが、H.I.S.では他社に先駆けて、燃油サーチャージ込みの総額表記での販売を開始(2008年2月)し、旅行を購入する際の不便さ、あいまいさを払拭することで、お客様にわかりやすい会計を目指しました。この総額表記は現在では多くの旅行会社が導入しており、一般的となりました。

スマホの登場で情報取得が手軽に
 技術の革新は加速し、iPhoneを代表とするスマートフォンの出現により、Facebookなどソーシャルネットワークサービスなどを活用した人々の交流はより密になり、世界どこでもすぐに繋がる時代になりました。同時に、旅行予約もネットツールの技術進化により、ネット予約が確立し始めた時代となりました。価格変動をすぐに反映できるようになり、旅行商品にプライス・コンシャスなお客様が増加した要因と思われます。また、海外の情報を比較的簡単に手に入れることができるようになったことから、海外での過ごし方も多様化する傾向もみられ始め、FIT化が進む一歩となったと考えられます。情報を手もとで得ることの出来る時代においての海外旅行は、癒しに代表される現実からの一時的な逃避が多くの方の目的であった様に思います。
 H.I.S.でも、いち早く2008年よりオンラインでの予約を開始しており、それに伴いコールセンターによる予約が急成長した時期でした。また、オンラインと店舗を活用した、ブリック&クリックスタイルをいち早く取り入れ運用いたしました。

安近短のアジアがブーム
 この時期の海外旅行者の動向としては、アジアが全体的に人気となっており、逆にヨーロッパの人気渡航先であったイタリアが下がっております。一方、アジアでは韓流ブームに起因した需要の波が海外レジャー市場にも波及し、近距離・安価に行くことができるアジアへ複数回行く傾向が出てきたことなども影響しランキングの上昇が起きたと考えられます。

 

2009年~2018年 情報過多時代

LCCの参入と訪日ブームによる市場激化
 2009年7月に中国人個人観光客への査証が解禁されたことを皮切りに、訪日外客数は東日本大震災の年を除き毎年増加。2015年にはついに日本人の出国者数を上回りました。日本にとって「国際観光」が国策となり、インバウンドによる観光消費は小売業、飲食業など地域・関連企業において、業績面に影響を与えるまでとなりました。同時期、航空自由化も進み、インターネット予約、徹底した低価格、短中距離市場に特化、簡素で効率的な運営を特徴としたローコストキャリア(LCC)が日本市場にも多く参入しました。羽田空港の新国際線ターミナルが開業したことも相まって、海外旅行がより一層身近になったとされる象徴となりました。

スマホの普及増加によるオンラインビジネスの登場
 スマートフォンが急速に普及し、2012年には人口の約半数が、2015年には約72%が保有するという、ほぼ1人1台情報端末を持ち歩く時代となりました。知りたい情報はいつでも即時に得られ、どこへでも持ち歩けるようになったことで、スマートフォンをプラットフォームとする多様なサービスが登場しました。シェアリングエコノミーが活発になり、一般消費者間の取引(C2C)という新たな動きがみられる時代に突入しました。より一層個人に合った消費が求められている中での海外旅行は、モノからコトへ体験に重きを置いた個人の価値観重視の傾向が顕在化したように思われます。
 旅行業界では新たな勢力としてオンライントラベルエージェント(OTA)が登場しました。旅の形態もスマートフォンによる検索性、閲覧性、予約機能が向上したことにより需要が多角化し、FITもシェアを拡大しました。パッケージツアー、航空券、ホテルなど旅の商材のメタサーチが登場したことで、自ら欲しい商品をより的確に検索、購入することが安易になりました。

台湾がハワイと同規模の渡航先に拡大
 近年は年により上下の動きはありますが、台湾の上昇が目立ちます。東京だけでなく地方空港からもLCCが就航したこともあり、手段・価格の幅が広がり、ハワイと同規模のお客様が訪れる渡航先となりました。また、海外渡航者数の上位10位以内にランクインはしませんでしたが、東南アジアなど新興国への渡航が増加してきたのもこの時代です。各国の経済状況が上昇してきたことから、治安の向上、宿泊施設の充実が図られたことが大きな要因と考えられます。
 H.I.S.では訪日需要の高まりによる座席確保の環境が変化したこともあり、チャーター便の仕入れ強化を図りました。また、海外支店により旅先でのサポート体制をより充実させることに加え、海外支店がある強みを活かした“貸切プラン”をパッケージツアーに組み込むなど、旅ナカの体験価値の向上に注力し、OTAとの差別化に努めてまいりました。「ルーヴル美術館貸切ツアー」は、2019年度で11年目となり、お客様より高いご支持をいただいております。
 また、国内店舗の一部を渡航先に特化した、専門店の展開を拡大した時期でもあります。現在、ハワイ、ヨーロッパ、沖縄といった、人気観光方面のスペシャリストによる専門店ならではの深掘りした旅のコンサルティング力の向上を図っております。旅行行程の全てのシーンでの安心・安全なサポート力に加え、お客様に喜んでいただけるオリジナリティを持つ商品を常に提供し続けることが旅行会社の使命であると考えております。

 

若者は海外旅行に意欲的
 以前は、「若者の海外旅行離れ」という言葉をよく聞きました。確かに、日本の総人口における若者の人口が減少していることにより、全体の海外渡航者数における若者の構成比率は縮小しています。しかしながら、若者層(ここでは20~29歳を定義)の出国率でみれば、SARSやイラク戦争など、外的要因が高まった十数年前には若者の渡航は弱含みの傾向が見られましたが、近年は増加傾向になっております。要因として、LCCが就航し価格の選択肢が広がったこと、スマートフォンなどによる情報収集や発信が手軽になり海外への敷居が低くなったことなどが影響しているものと考えられます。今後、日本人の出国者数増加には、発信力がありコミュニティを持つ若者の動向が大きく影響する可能性があると言えます。

総括して

 平成はアナログからデジタルに、オフラインからオンラインに大きく技術的な転換を向えた時代となりました。物理的距離は情報により身近に感じられる様になり、日本における海外旅行はより安易になりました。時代はめまぐるしく移り変わっており、新たな技術が日ごとに登場し、世の中の仕組みを次々と変えております。
 H.I.S.は格安航空券販売から始まり、自由度が高く格安のパッケージツアーを世の中に提案し、海外旅行の自由度が拡大していくことに合わせ成長してまいりました。今では、必ずしも旅行会社の店舗に行かずとも、インターネットがあれば全ての手配をすることができる時代になりました。しかしながら、実際の旅を通してでしか得たり感じたりすることが出来ないことも多くあります。我々、旅行会社は、世界各地の事情や航空会社、ホテルなどの現状をきちんと把握し、正確な情報としてお客様に届けることはもちろん、旅のチカラをもっともっと多くの方々に伝え、旅を通じて叶えることが出来る多くの可能性を伝えていく必要があると考えております。
 5月の改元より、新しい時代の幕開けとなります。今年はラグビーワールドカップ、2020年には56年ぶりに東京オリンピック・パラリンピックが開催され、訪日需要に更なる注目が集まりますが、海外渡航においても観光庁は2020年に2000万人突破を目標に据えております。未来を担う若者はもとより、多くの年代層の方が海外に行くことで、その国の文化や歴史を知り相互理解を図り、且つ、アウトバウンドの活性化による国際競争力が向上するために、H.I.S.も少しでも助力となるよう、引き続き邁進したいと考えております。

注1:アメリカ本土の数値には米領サモア、プエルトリコ、米領バージン諸島などの地域への入域者が含まれる

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